在住日本人が教えるとっておきのマドリードの目次へ戻る>>
 
マドリードで4 代続く、すべての行程が手作業という老舗パン屋さん「Viena Labaguette 」の菓子セクションである「Viena Lacrem」 を任されている石埜氏は、バルセロナ、バレンシア滞在を経て、首都に3 年半前から住み始めました。急なスカウトに続く転動に、菓子工房を任されるという大役。マドリレーニョのハートを掴むべく、様々 な工夫を凝らしています。
「マドリードでは、お菓子に奇抜さは求められていないようです」と石埜氏。「週末の家族との食事のあとにとっておきのお菓子を」というイメージで様々なお菓子を展開しています。 お店は、ファッションセンスの鋭い人々 が集まるチュエカ地区至近、フエンカラル通りの横道を入ったところ。
味にも見た目にもうるさいギャラリーの中で、クラシックなスタイルを尊重しながらも、現代的な組み合わせを追及する石埜氏の味は確実に評判を上げています。
   
  -とえばバルセロナとマドリード、お菓子の好みも違うんですね。

「クラシックが悪いわけではありません。その土地によって好みが違うのは当然です。
マドリードの職人さんと働いた経験もありますが、さすがにクラシックなものに関して造詣が深く、勉強になりました。」 最近の自信作は、抹茶のバターケーキ。
中には木毎のジャムとチョコレートチップを混ぜ合わせたオリジナルな作品です。マドリードでは冒険かと思われたこのケーキは、思いがけず大好評。
「説明のいらない味、食べ始めたら説明なんかいらない、最後まで食べきってしまうような味」を目指しているという石埜氏。
すっかり店の定番になった事実が、彼の目標達成を明確に示しています。 石埜氏の休日は「オールドマドリード」と呼ばれる周辺がお気に入りの散歩コース。 「ブエルタ・デル・ソル周辺は私にとってまさにマドリードのイメージ。
あそこからマヨール通りを通ってオペラのある広場まで歩くとき、ビル越しの教会や空を見て、しみじみヨーロッパに居ると言う事を自覚しますね。
日本から家族や友人が来たら、まずは『Museo del Jamon』 でビールを飲みながら旧市街での案内場所を考えるかな。
夏は市街のあちこちで行われる野外コンサートもいいですね。」
 
-マドリードの印象はどうですか?

「住んでみて良い意味でイメージとは反対でした。
マドリードに住む のは初めてですが15年程前に旅行で訪れたことがあり、以前自分が立ち寄った場所を思い出しながら歩くのは楽しいし、当時と比べて街が明るくなった気がします。」 この街の最大の魅力は、その利便性だと石埜氏は力説します。
「首都らしくさまざまな国籍の人達がいて私のような一外国人が住むには良い所だと思います。
各種の公共サービスや公的な書類を作るのにも便利ですし。交通、公共サービス、輸入食材等バルセロナも便利だと思いますが、やはりこちらの方がより選択肢が豊か。
うちの工房は卸業もしていますが、バスクへ、アンダルシアへと送るにしても、国の真 ん中に位置しているというのは、やはり非常な利点になります。」職業柄、食べ物やレストランには敏感な石埜氏がお薦めするのは自らの勤めるバティスリーの至近「Ribeira do Mino」。魚介類など豊富でリーズナブ ルなタバスが魅力とのこと。
「Horno San onofre」 で初めて食べた伝統菓子の迫力も忘れられない出来事だったそう。
「日本人の菓子職人は少ないから、すぐ覚えてもらえていいですよ」と笑う石埜氏。店を構えたマドリードは、彼にとっては異国ではなく、ホームグラウンドになっています。
 
 
 ▲このページのトップへ戻る